『あっ、川辺。こっち。芭菜もだけど、いい?』

清水さんの横に座っていたのは、入学式の日、あたしに声をかけてきた芭菜さん。

小さく頷くと、清水さんの向かいに座った。

『でさ、健太郎の事だけど。』

その話を始めた途端、芭菜さんは煙草を口にくわえた。

『健太郎は、別れたって言ってたんだよ。』

「えっ?健が?」

『うん。「俺は、あかりを傷つけたから、別れるしかなかったんだよ」って言ってた。』

そう清水さんが言った途端、芭菜さんは顔を上げた。

『あんた、そのままでいたら別れられるよ。好きなんでしょ?』

芭菜さんが、あたしに煙草を突き付け言った。

「…好きです…。」

『なら話は早ぇ。あたしが、健太郎呼んでやるよ。ちょっと待ってろ。』

清水さんは、ケータイを取り出すと、慣れた手つきで電話をかけた。

『もしもし?うん。そ、清水。今からさぁ、柳川町のカフェに来れる?うん、うん、うん、ん。分かった。』

電話を切った後、小さく微笑み一言言った。

『来るって。』