鳥――リュフトヒェンが頭上で喚いた。
「早く、早く! ごちゃごちゃ言ってる場合じゃないよ! 今跳ばなかったら俺たちじゃ終わりだ!」
「終わりってどういうことなの?」
「説明してる時間が今はないんだ。 来たいならついて来て。 離れないで」
「離れないって?」
「離れないってことさ!」
 リュフトヒェンがまた鋭く言った。
その時。
 視界がぐるりと回転した。
トゥエンティは小さく悲鳴を上げ、リュフトヒェンが叫んだ。
「やばいよ!距離がどんどん開いてく。 座標固定。 間に合わない、マイナス方向に1だけジャンプする 跳躍の幅を狭くして切り抜けるぞ」
 青年――シルヴァンの手が延びてくると、トゥエンティの右腕を掴んだ。
「離れないで、俺たちはバードソウルだから、あんまり遠くに飛べないんだ」
「飛ぶ?」
「アンタなにも知らないんだな! フィユーはみんなそうだ!」
 リュフトヒェンが再び叫んだ。その瞬間、1羽と2人の姿はその世界から掻き消えた。そう、文字通り本当に消失したのだ。彼らは次元の扉を潜り抜け、全く違う世界へと飛び立っていったのである。
 神殿の広間でウルトピが小さく呟いた。
「さようなら、トゥエンティ。 愛していたよ、私のフィユー」
 儀式は成功した。ウルトピは歴代の大神官たちが成し遂げてきた奇跡をやり遂げた。稀有の妖精フィユーを召喚し、そして故郷へと還す。それを成し遂げて初めて真実大神官と認められる。真実この世界を統べる者として認められるのだった。しかしそれは、彼を今までずっと支えてきてくれたフィユーとの別れをも意味していた。
 祭りの夜は明け、再び次代のフィユーが訪れるその日まで羅針盤は眠りにつくのだ。
祭は終った。