――――――――――
――――――――



「‥そんなことがあったの」

「ああ、そんなことがありました」

守り師の部屋へ行くと、護衛の兄貴も、もちろんそこに居た。
昨日の夜の話をすると、兄貴は興味深そうに耳を傾けてくれた。
絵本を読み聞かせていたから、眼鏡を掛けている兄貴は
なかなか見ない顔だから、何だか変な気分だ。

「それでな、腹強く蹴られて痛ぇんだ」

「分かった!お前、アタシから薬を貰おうってんでしょ!!」

「そ、打身に効く薬あるだろ?」

「医務室に行ってくればいいじゃん!アタシは薬屋さんじゃないの!!」

「だって医務室行ったら、利用書類書かねぇといけねぇもん」

ギャンギャンと吠えるファントムに
薬を貰おうと頑張る俺。
そんな俺たちを交互に見る兄貴は笑っていた。

「まぁ、様子見てあげよう。その程度で、医務室行くか行かないか決めなよ」

兄貴の一言に、ファントムは仕方が無い顔をした。
有難う、兄貴ぃ!!

「なら、さっさと脱いでよ」

「はいはい」

言われるまま、上着を脱いだ。
露わになった腹は、
広範囲が痛々しく内出血し、青く痣になっている。

「‥ぇ?」

「‥あれ?てか、うわッ‥セレス痛いねソレ」

「ああ。って、イテェよ!」

ぺち、と腹を軽く叩いて面白がる兄貴とは逆に
ファントムは眉を寄せていた。
どうした?と訊こうとした時、その口を開く。

「お前、この前の傷は?」

「ああ、腹の傷か?ファントムの薬で、綺麗さっぱりだぜ?」

「‥なん、で?」

信じられないものを見る様な目で、
ファントムは腹から俺の顔に視線を映した。

「あの光はとても熱いの。人間が受ければ例え癒えたとしても、ケロイドが残るのは確実だよ」