沢山の悲鳴が聞こえる。
周りの人が忙しく城を離れていく。


早く、早く逃げろ!


そんな声の中で俺は、立ち止って城を見上げた。
俺の服の裾をぎゅっと握る小さな女の子。
長いグレーの髪に、ボロボロの服。
目は、何だか滲んでいる様に見えた。


その瞬間。


響く爆発音。

此処ら一帯の空気が激しく揺れた。


『‥な、に?』


女の子の小さく震えた声。
俺は爆発した城へ行こうとしたが
女の子が俺にしがみ付いて、行かせてはくれなかった。

宙に舞う火花。
キィンッと隣に落ちてきた金属。
女の子はそれを拾った。


それは‥‥―――――





「‥っ」

パチクリと目を開くと、オニキスが俺の顔に乗っかっていた。
辺りを見渡すと、いつもと変わらない俺の部屋。

‥夢、だったのか。

それにしても、何かリアルだったというか‥何というか。
俺はベッドから降りると、いつもの様に真っ先に洗面台へ。
そして覚える違和感。


‥うん、俺、確かに言ったな?


『大丈夫だよ、この位直ぐ治るって!』


‥でもさ、なんか早くないッスか?
だって頭の傷、もう瘡蓋になってるし。
痕が残っちまうと思ってたけど、全然残りそうにねぇ。


「そういえば、前にもこんなこと‥ブッ」

見下ろせば、ケタケタと笑うオニキス。
この野郎、顔面に水掛けてきやがって‥ッ!!


「お返しだーッ!!」