「おーい、セレスー」
「ん?兄貴か、何だ?」
数冊の本を手に、兄貴は俺たちの方へ近づいてきた。
俺のところまで来ると、兄貴は机の後ろを覗きこんだ。
「あれ? 爺さんどうしたのその腕」
「ちょっとヘマこいてな」
「気を付けなよ、もう年なんだからさ」
「ほほほ、まだまだ現役じゃわい」
良く言うよ、と言いながら兄貴の目線はアメスへ。
ぐいぐいと俺を引っ張って、少し距離を置かせると
兄貴はニヤニヤとして言った。
「あれ、この前の彼女じゃん」
「ぇ、あ、あぁ‥」
そういや、俺たちって
付き合っている‥って事だよな?
と言うより、好き合ってるの方がいいか?
「ま、そんなことよりさ、最近変わった事ない?」
「変わったこと?」
「あぁ。“守り師”がね、何か治安署に入り込んでるって」
言われて真っ先に思い浮かんだのは、アメスだった。
やっぱり、勘付かれているよな。
「‥‥いや、分かんねぇや。ゴメンな」
「そうだよなぁ、ありがと」
兄貴は“守り師”の護衛だ。
だから“守り師”が排除すべきだとしたものを倒す義務がある。
“守り師”を守る義務がある。
治安署が守られているのは、“守り師”の結界のお陰だ。
俺は日頃から出入りしてるけど、結界がどこからあるかとか分からない。
でも、普通の人間で無いモノが出入りしようとする事は出来ないらしい。
アメスがここに入ってこられるのはきっと
モーメントムーブで直接俺の部屋に来るからだろう。
結界は、治安署の敷地内だけにしか張っていないから。
モーメントムーブは、一度言った事があるところでないといけないらしい。
アメスは俺の部屋に来た事が無いのに、俺の部屋に来れた。
それはきっと、オニキスが影響しているのだろう。
じゃあオニキスは?
どうして此処を出入り出来るんだ?

