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「どうしたんでしょうね、おじいさん」

「‥さぁ、どうしたんだろうな」

大きな図鑑を棚に押し込みながら、
俺はさっきの爺さんの表情を思い返した。

何か、驚いた様な感じだった‥?

「‥まさか、お前の正体がバレたとか」
そんなんじゃ、ねぇよな?

くるりとアメスを振り返ると、困った様に笑われる。

「それだったら、困りますね」

ふぅと息を吐くと、俺に図鑑を手渡した。
それを棚に入れながら、ふと過ったのは昨日の疑問。

「なぁ‥、あのさ」

「はい?」

「昨日のヤツ、仲間だってお前は言っていたけどさ‥」
キス、してたよな?

呟くと共に、沈黙が流れた。
折角、丸く収まったんだ。
言わない方が良かったか?
でも、結構気になってんだよな‥。

「えぇ、されましたね。キス」

「‥‥」

「頬に」

「‥へ!?」

昨日見た時、口にしている様に見えたけど
あれ、頬だったんか!?

ポカーンと口を開けていると、
そんな俺を見てアメスはクスクスと笑った。

昨日の出来事の原因は、
その現場を見てしまったからで。
マジでキスしていると思って。
居た堪らなくなって。

それで‥‥


「はぁぁ~、そうなのかよ」


なんだよ、何か自分が嫌になってきた。
勘違いで暴走してたなんて‥
最悪じゃねぇか。

「妬いてたんですか?」

「あぁ、そりゃぁ‥」

そう答えると、アメスは笑ったりしなかった。
ただ、優しい笑みを浮かべているだけで。
だから俺も、自分を笑う事しか出来なかった。