「‥何で、何も言わないんですか」
「何が?」
「私は貴方に、嫌われていると思っていました」
「‥は?」
つい間抜けな声が出てきて、俺は瞬きをした。
なんで、こんな話になってんだ?
「だって、何も言ってこないじゃないですか」
好きとか言わないし、何もしてもこない。
「‥それに私は‥貴方にとって倒すべき存在。だから、好きになってくれないと思っていたのに」
まるで俺がアメスを好きだと
分かっているような言い方。
アメスが手で涙を拭おうとしたところに
オニキスが頭の上にハンドタオルを落としてきた。
渡せってことだろうな。
俺はアメスにそれを手渡した。
おずおずと受け取るアメスが小さく咳き込んだ時、
ハッとした。
「まさか‥‥この前泊まった時、聞いていたのか?」
アメスはベッドで寝ていたと思っていた。
もしかしてオニキスが俺のところに来たのは、アメスが促したのか?
アメスの肩の上にちょこんと降りたオニキスを見れば
そうだよと言う様に、二カッと得意そうに笑う。
「あの位で吐いてるなんて言って、笑いません」
「‥アメス‥‥」
「自分を責めていますよ、‥こんなに自分が嫌いになったの、初めてです」
頭を撫でてやると、アメスは更に俯いた。
服を握る手は、震えている。
「‥殺せなんて、言わないで下さい」
「何で?」
1ヶ月以内に俺を好きにならなかったら
俺を殺すと言っていたくせに。
そう思ったが、口には出さなかった。
「‥‥一緒に、旅に行けなくなるじゃないですか」
そんな事を言われるとは、全く思ってなくて。
あの朝話した事は、冗談だと思っていた。
そう思っていたのは俺だけだったのか‥?

