フッと消える蝋燭。

漂う空気。

綺麗な筈のステンドグラスからは
月の光も入ってこない。
それ以前に、ステンドグラスがあるだろう場所までも
真っ暗に見える。

ここら辺って、ここまで暗いのか?



‥カツン、カツン‥―――


教会に高く響く

誰かが向かって歩いてくる音。
ギクリと肩が揺れた。

‥おいおい、ビビり過ぎだろ、俺。



「あぁ、蝋燭が消えてしまったのですね」


後ろからした声は、女の子のものだった。

俺に気付いているのか?
気付いてないのか?

近付いてくる足音に、俺は振り返った。

空では雲が、真っ赤な満月から退いた。
教会に照らされる光。
今の今まで色を持っていなかった世界は
全て真っ赤になった。


「‥!?」


床も壁も、天井も。
昼間はとても綺麗なステンドグラスまで



全て、全て

真っ赤。





「‥なんだよ、コレ」

震えている声が教会に木霊した。
正面では、銀色の髪をした女の子が微笑んでいる。


「見て分かりませんか?コレは‥―――――」




全て、全て

真っ赤な血ですよ。