トンッと扉を押せば、ギィィ‥と
気味悪く扉がゆっくりと開いた。

光の正体は、一本の蝋燭だった。

日頃は真っ白に見える床、壁、天井。
でも、夜の今では真っ黒に見えた。
真っ暗な教会は、何だか静かすぎて。
恐ろしく感じる程だ。


疲れているんだ。
早く部屋に戻って寝たい。

そんな気持ちがあるのに、
気付けば、教会の中に足を踏み入れていた。



パシャ‥



「‥?」

教会の床は、何故か濡れていた。
足を進める度に響くその音は
俺の嫌な感じを少しずつ大きくする。

これ以上、進まない方が良い。

頭の中で警報が鳴っているのに
俺の足は戻ろうとしなかった。

進むにつれて、違和感を覚える。

靴で踏んでいるから
感覚はちゃんとはっきりしない。
けど‥‥

「‥床に零れているの、」

水じゃねぇよな?

どこか、ぬるぬるとした様な感覚。
俺は蝋燭の前までくると、息を飲んだ。




‥周りが、赤い。




その時、ギィィと扉が動き出して
バタンと大きな音と共に閉まった。