太陽が高く上がる昼間の今でも薄暗い森の中。
鳥の囀りさえも聞こえなく、静まりかえっている。
「‥静かだな」
「ああ」
ぽそりと呟いたのは、
同職の兄‥といっても、義理だ。
爺さんの本当の孫にあたる人であり、
冷静な判断に高い身体能力。
それを買われて“守り師”の護衛をしている。
「今日はいいのか?護衛」
「ああ、爺さんに訊きたい事があるらしいからね」
だから、護衛は大丈夫だってさ。
つまらなそうに吐かれた言葉は、森の中に消えていった。
遠くを見つめて目を凝らしても
見えるのは不規則に並んだ木ばかり。
何も出る気配はない。
俺は武器を耳に付けたまま。
でも、兄貴は常に武器を手に掛けている。
兄貴の武器は、俺のに似ているロッドタイプだ。
俺の武器様に両端に刃が付いているタイプではなく
片方に鎖の付いた鑓が付いているタイプ。
見た目的にも扱いが難しいであろうそれを
兄貴は易々と使いこなす。
俺が尊敬の意を寄せるのは人的な意味もあると思うけど
武器を使いこなす事に凄さを感じるから
こういう理由もあるのかもな。
そう思っていた時、パキリと小枝が折れる音。
背後から、またパキリ、パキリと鳴る。
「お出ましだね」
ニッコリ笑った兄貴の目つきが変わった。
イヤリングを武器に変えて、後ろを向く。
「囲まれたな」
「でも、これくらいなら何とかなるだろ?」
「もちろん」
そうして同時に地面を蹴ると、
激しい風が起こる中、ドルガーを切り裂いた。
ズブズブと地面から湧き出てくるドルガー。
俺の後ろでは、兄貴が気持ちいいくらいに
ドルガーを一掃している。
‥何だ? この違和感。
何かが、いつもと違う。

