「教会の血も、あの残骸も、綺麗に片付けました」
これが、教会に何も無かった理由です。

微笑むアメスは、机の上に目をやった。
つられる様にして俺も机を見る。

そこには爺さんから勧められた本が数冊と


チャロ石の欠片。


アメスはソレに手を伸ばした。

「どうした?」

「‥いえ、何でもないです」

チャロ石を一撫でだけすると
アメスは部屋の中を探検し始めた。

年は15歳。
まだまだ好奇心旺盛な年頃なのだ。

「おい、お前此処が何処だか分かってんのか。そんな余裕ぶっ扱いて、見学している場所じゃねぇ筈だろ! 俺が此処の奴らに、お前が自分の部屋にいるって言ったら、お前どうなるか分かってんのか?」

ポフンとベッドのふちに座って、アメスは目を丸くした。
何でそんな事言うのだろうという顔をして。

「別に言われたって構いませんよ? 私、モーメントムーブ出来るんです。いわゆる、瞬間移動ですね。それが出来るからきっと、捕まりません」

そういうアメスの余裕に満ちた顔を見て、ドキリと心臓が高鳴った。
ゆったりと笑うその顔は、まるで天使のように思えるのに。

何故だろう。
何故こんな綺麗な笑い方の出来る子が
世界を脅かす者なんだろう。

俺、どうしたんだ。
教会にいた時、アメスに恐怖心を抱いていたのに。
こうやって傍にいると、そんなもの感じなくて。


‥俺、コイツの事―――‥

好きになってしまったのか?