そう言うと、チャロは顔を上げた。
「“隠し事”はまぁ‥ちょっと不愉快だけどさ、それはいつかちゃんと話してくれるんだろ?」
「話していい、と思った時に」
「ならそれまで、俺はいい子に待っとくな!」
ちょっと強引に頭を撫でると、チャロは困った様に笑った。
そう、お前はそうやって笑っているのが一番だから。
だから俺もお前の笑顔が少しでも増える様に、お前の為に笑う。
あの時言ったもんな、
『いつかはちゃんと笑うから。その時は、一緒に笑ってくれるか?』
“隠し事”はあるとしても、訊きたい事はまだある。明日から、任務の隙を縫って訊いていくか。
そういや、爺さんにも会いに行かねぇと。
薄暗い階段を降りて、管理室から牢屋の鍵を貰う。
十分広い空間だけど何も無い虚しい牢屋が並ぶ此処。
「えっと、何処だ?」
「こっち」
指差された方を見れば、鉄の扉が。
そこをくくれば、そこで見た牢屋とは違う作りの牢屋が。
天井からぶら下がっている手錠に
部屋の隅から伸ばされたリングは、足につけるもの。
「‥まさかこれ、付けねぇといけねぇの?」
「うん」
それが当たり前というような返事をしながら、チャロは牢屋へ入った。
ジャラリと鎖の音がしたかと思うと、カチリと響く金属音。
チャロは自分で手足を束縛し、俺に背を向けた状態になった。
正直、こういう姿は見たくない。
「‥辛くなったら、俺のとこに来いよ」
「いけないよ、管理人が出入り口で見張っているのに」
それに、出る時は何の問題もないけど、戻る時に一つ問題があるの。
モーメントムーブ出来るからと言ってもね、手錠の中に手を入れた状態に戻る事は出来ない。
取り外しする時は、その鍵が無いと駄目だもの。
そう言いながら、小さな窓の外を覗く瞳は光を探していた。
チャロにはこんな場所似合わない。
明るくて、綺麗なところに連れて行ってやりたい。
「‥俺と、逃げたりしねぇ?」

