さて、言いたい事は言った。
訊きたい事は山ほどあるけど、このままチャロが此処にいる事は出来ない。
「チャロ、地下にいるのか?」
「うん、意外と鉄格子がキレイなの」
小さな小さな窓から漏れる月の光が当たった時なんて、尚更。
何だか嬉しそうに笑うチャロに、俺は違和感を覚えた。
ひっ捕まえられて、あんな何も無い処に閉じ込められているのに。
何笑ってんだよ、お前は。
「‥何でそんな顔できんだよ」
「正直ね、安心しているの。捕まって、此処にいる事」
おかしな事を言う。
この二日間でチャロにはいろいろあり過ぎた。
操られて、意識が戻った時に真っ先に見えたのは俺の血だろう。
そしてさっきの‥アレ。
頭、イカレてしまったんじゃないかという視線を送れば
チャロは言葉を続けた。
「私ね、沢山隠し事があるの。エル・ディアブロの皆に対しても、‥貴方に対しても」
でも、どちらかと言えばエル・ディアブロの皆に対しての隠し事の方が
大きいというか‥重大というか。
バレたら絶対に殺される。
「って、もうバレているだろうから、操られたんだったっけ」
俺の顔を見ずに、チャロはそう話した。
伸ばされた手が俺の腹を擦り、それを何も言わずに見つめていた。
‥俺に、何を隠しているんだ。
「ゴメンね、痛かったでしょう?」
「いや、‥それでも直してくれたのはお前、だよな?」
「バレた?エル・ディアブロの治癒能力は分け与えられるの」
得意そうに笑った時、やっと俺を見るチャロ。
「こんな事言ったら怒るだろうけど、向こうにいる時は私がいつも会いにきていたけど、此処に居ればセレスが私に会いにくるでしょう?」
だから、それが嬉しいの。
ホント、お前は何言ってんだよ。
捕まっている身なのに、そんなはにかんだ笑顔して。
怒ってやろうと思ったけど、やっぱり俺は怒れない。

