「‥ぇ?」
「お前の命は既に俺の手にあるしな。でもさ、足りねぇよ」
持ってるだろ?俺が大切にしてきたモノ。
手を差しのべながら言うと、チャロは瞳を閉じた。
すぅっと胸の辺りから出てきたのは、ぼんやりとした光を纏った欠片。
俺はそれを手に取った。
ずっと、ずっと大切にしてきたモノ。
「‥コレさ、俺が持ってちゃ駄目か?」
「何故です?」
「や、そのさ‥」
コレ持ってると安心するっていうか‥、一応持ち運びできるし。
ずっと傍にあったから。
「‥なら、両方頂いて下さい」
ニコリと微笑んだチャロを見たのは、本当に久しぶりだった。
まるで、花が添えられている様に華やかな笑み。
抱きつきたくなったけど、ぐっと堪えてぶんぶんと頭を振る。
訊きたい事よりも、どうしても言いたい事が一つある。
言っておかなければならない事が。
「チャロ、俺」
お前の事、好きだ。
「悪いけどさ、お互いの立場とか、過去を思い出したから好きになったとか、そんなのじゃないから」
本当に、本心から好きだから。
「‥だから、もう俺の前では“アメス”じゃなくて“チャロ”で居ろ」
真剣にこんな事言う自分が、チャロの瞳に映っていた。
それを見て、何だか急に恥ずかしくなって軽く俯く。
すると動く腕が見えて、それは背中に回された。
「うん、有難う。‥セレス」
最後にこっそりと付けられた名前が嬉しくて。
俺もガバリとチャロに腕を回した。
チャロの驚いた声に笑うと、チャロも面白おかしく笑って。
どちらともなく、口付けた。

