明るくなる視界の中、見えてきたのは見慣れた景色。
床に足が付いたのを確認すると、俺はチャロを降ろした。
オニキスが移動させてくれたのは俺の部屋。
ここなら、誰にも見られないし会話は聞かれない。
仮面とマントを外すと、少し冷たい空気が身に染みた。
恐怖で震えているのであろう。
俯くチャロに手を伸ばして、抱きしめようとしたが
手に反応してビクリと大きく反応した姿に、
俺はその手を仕舞った。
‥トラウマになってんのかよ。
「あ‥ごめ、なさ‥」
俺って分かっているのに、震えが止まらないチャロ。
よっぽど怖かったんだろう。
「‥チャロ」
名前を呼ぶと、チャロはハッとしたように顔を上げた。
どうしてお前が“アメス”でいるのかは分からない。
でも、俺の前では何も隠さないでいいから。
「もう、大丈夫だぜ‥」
「‥っ」
ぶわりと溢れ出て来る涙に、ゆっくりと手を伸ばすと
泣きじゃくるチャロは俺の胸に飛び込んできた。
今度こそ、その小さな体を抱きしめて。
大丈夫、大丈夫と何度も呪文のように繰り返しながら
実は一番安心しているのは自分じゃないかと思った。
もし、もうちょっと遅かったら。
きっと俺は絶望のどん底に落ちていたかもしれない。
酷く考えたら、それどころじゃ済まなかったかもな。
“あの人”を殺していたかもしれないから。
「なぁ、押し倒されただけだよな」
「はい‥」
即答だから、何もされてねぇんだろうけど‥
「何でモーメントムーブして逃げねぇんだよ」
「逃げたら、貴方と‥お爺ちゃんと話せなくなるからです」

