「‥おに‥?」
部屋にする筈の無い声が響いて、そろりと前方を見る。
鎖の付いた黒い服に、アシンメトリーなスカート。
銀色の髪を、赤い爪をした手が指通る。
「‥ア、メス?」
「こんにちは‥というより、こんばんは ですかね?」
ペコリと礼儀正しく頭を下げるアメスに、
おに‥何たらはぱたぱたと飛んでいった。
‥その羽根、伊達じゃなかったのか。
そう思いながら手を見ると
出血はしてないがくっきりと歯型が残っている。
あ~ぁ、こりゃぁ暫く残るな。
「‥おい、何で俺の部屋分かったんだよ」
ていうかコイツ、何時入ってきた?
仮にも治安署には“守り師”がいるんだ。
簡単に入って来れるとは思えねぇ。
「昨日別れた時に、この子を貴方に忍ばせておきました」
この子と私は繋がっていて、この子の居場所は分かるんです。
もちろん、この子は私の居場所が分かります。
「‥昨日‥、‥夢じゃなかったのか」
「夢かと思っていたのですか?」
「‥教会に行ったんだ。そしたら、何も無かった」
「でしょうね」
さらりと言う彼女は、オニ何たらを撫でた。
気持ち良さそうに目を細めるソイツはアメスにじゃれつく。
「なぁ、何でだ?昨日の事は現実だよな?」
教会全面が血で塗られていたのも。
あの、死体の山も。
「ええ、全て現実ですよ」
「じゃあ何で‥ッ」
「綺麗にしたんです」
‥綺麗に、した?

