いつの間にか町外れまで来ていた。
そこにある教会は、決して大きくはないが綺麗だった。
キラキラと、プリズムに光るステンドグラスが眩しい。

『なぁ、どこに行ってんだ?』

『‥もうちょっと、さき』

『?』

行く場所を答えないチャロは、俺の手を引っ張った。
急かす様に腕を引っ張るくせして。
思わずチャロの足を踏んでしまいそうなくらいに遅く歩いている。
教会の横を通って、後ろへ。
そこから昼間でも薄暗い森の中へ入っていく。
耳がおかしいのかと疑ってしまいたくなる程の静けさの中。
俺たちの足音だけが、音を奏でた。

気のせいか?
森の中に進む程、チャロの歩きが更に遅くなってる‥。
‥チャロ、怖いのか?

隣を歩くチャロの顔を覗くが、その長い髪が邪魔をする。
表情が、見えない。
だた一つ、一つだけ分かったのは

唇を強く噛み締めている事だけだった。

しばらくして、遠くの方に日のあたる場所が見えてきた。
何かがキラキラと光っていて、俺たちを呼んでいるみたいだった。

『湖?』

そこまで大きいとは言えない、綺麗な湖がそこにはあった。
子どもが泳ぐには、もってこいかな。
でも、‥底が見えない。
あー、やっぱちょい危ないかも。

そう思って水面を覗きこむ。

『けが、だいじょうぶ?』

『ああ、このくらい、すぐになおるって』

まぁ、そんな事よりさ。

『どうしたんだ?こんなところに来て‥』

『‥ゴメンなさい』

チャロは、悲しそうな目をして俺を見た。
謝った意味が分からずに、チャロを見つめていると
水面が光り出した。

『なんだ!?』

『セレス、おわかれなの』

『‥え? どういうことだよ』

今にも泣きそうな顔で、チャロは光る水面を見た。
だから歩くのが遅くなったり、唇噛み締めたりしてたのか?

『いまは‥なにもいえない』

『言えないって‥!』

『でもね、もしまたあえたらそのときは‥―――』





いのちを、もらうから。