“しんぞう”なの。
『‥心臓?』
『うん、エル・ディアブロのいちぞくはヒトだっていわれているけど、』
ふしぎなちからがつかえたり。
しんぞうがからだのなかにあるんじゃなくて、こういう‥いしだったり。
『モンスターに、ちかいよね』
『‥チャロも、その一族なのか?』
『うん、そうきいた』
石‥いや、自分の心臓を撫でるチャロは、そういうモノには見えなかった。
肌の感覚に、体温、見た目。
食べるものも一緒なんだ。
人間にしか見えないけど‥、俺と一緒じゃない。
なんだろ、何か寂しくなってきた。
思わずその顔から視線を外して、俺は水溜りで占領された道を見た。
俺とお前、何が違うんだ?
そう言っても、今はチャロから答えが返ってくる気はしなかった。
ただ、数年後。
もうちょっと大きくなった時に訊いたら、答えは返ってくるだろう。
その時なんて言われるかな。
‘人間とエル・ディアブロは全然違う’
一緒に生きる事なんて出来ないとか言われたら、ショックかも。
あ、でも‥ベニトおじちゃんはエル・ディアブロで
ルベおばちゃんは人間なんだから
一緒には生きれるか。
でも、それってベニトおじちゃんがルベおばちゃんを
特別だって思ったからだろ?
‥チャロは、どうなんかな。
視線を元に戻すと、チャロはウトウトと俺に寄り掛ってきた。
朝からずっと歩きっ放しだったもんな。
俺も何だかんだ言って疲れたし。
木による掛かると眠気が一気に襲いかかってきて
俺は慌てて背を張った。
‥俺が寝ちゃ、もしもの時困るだろ!
首にチャロの髪が当たって、くすぐったい。
俺は髪を退かすと、寝てしまったチャロの顔を覗いた。
『‥ぇ、なんだ、コレ』
チャロの体の所々から、何かが‥‥
黒い、渦が。
シュワシュワと泡の様に出てきて‥
“‥チャロも、その一族なのか?”
“うん、そうきいた”
さっきの会話を思い出して、何故か恐怖が過った。
このまま見ていると、チャロが別人になってしまいそうで。
チャロが‥、居なくなってしまいそうで。
俺は雨で冷えたその手をとって、
チャロの目が覚めるまで、ただ握り締めたんだ。

