洞窟から出て、大きく息を吸った。
木漏れ日に、朝露がキラキラ光る。
世界は綺麗だけど‥‥
俺は今、どんな心をしているかな。
昨日の出来事が夢だなんて一つも思えなかった。
それは頬を抓ったら痛いからって理由もあるけど
振り向けば洞窟があるから。
沢山歩いたせいで痛みを訴えている足があるから。
洞窟でマントを布団の代わりにして寝た昨日。
俺の隣で、チャロは泣いていた。
零れる言葉は、親を呼ぶ声。
それを聞いて、俺は唇を噛みしめた。
もう、そう呼べる人はこの世にはいない、と。
そして荷物を右手に抱えて
チャロの手を左手にとって。
俺たちはまた歩き出した。
『セレス、セレス!』
忙しく俺を呼ぶ声に
俺はハッと顔を上げた。
『何?』
『みて!あっち!!』
チャロが指さす方を見れば、
無数の白い花が咲き誇っていた。
その中に飛び込んではしゃぐチャロは
俺のところに戻ってくると
手を引っ張って花畑の中に連れ込んだ。
『ね、キレイだね!』
『あぁ、そうだな』
綺麗なのは本当だけど
内心、どうしてコイツはこんな時に
はしゃいでいられるのだろうと思った。
こんな、先の分からない不安定な状態なのに。
『‥めいわく、だった?』

