『ひとりじゃないよ、セレスくんがいるから、大丈夫』
『ベニトおじちゃん、ここにいてどうするんだ?』
『‥心配しなくて、いいよ』
ベニトおじちゃんは小さく微笑みながら、独り言の様に呟いた。
ゆっくり振り向いて、城を見つめて。
『チャロ、後は教えた様に生きるんだ‥』
膝をついて、チャロの肩に手を置く。
チャロの涙を拭いながら、ベニトおじちゃんはバツが悪そうな顔で微笑んだ。
『御免な、悲しい思いさせて』
もしかしたらこの先、お前は俺たちの事を知るかもしれない。
それを知ったら一人で行動を起こすかもしれない。
そんな事は、して欲しくない。
『‥チャロ、お前は‥過去に囚われたりしないでくれよ』
お前は、自由に生きてくれよ。
言っている意味が分からない、とチャロは顔を顰めた。
ベニトおじちゃんはそんなチャロの頭を撫でた。
‥あぁ、俺はもう、あんな風に頭を撫でられることはないんだな。
日常的だったことが、急に無くなると
こんなに、虚しい。
頭が? 心が?
どうせなら全体だ‥
空っぽに、なった気分。

