「‥な、嘘!?だって‥ッ」

「ああ、わしはお前がした報告が嘘とは思えん」

町の住民が全滅だとあったのに
実際は生きている住民がいたという報告が後を絶たない。

「ここ最近、おかしい事ばかり。だから過去の報告書を読んでいたんじゃよ」


スッと前に出される報告書。
そのページを読めと、爺さんは目で合図した。



「‥っ、これ‥―――」

「そうじゃ」

今から10年程前にも、同じ事が起こっている。


「‥10年、前?」


それは、俺が此処に来た時期。

俺が‥―――


「わしに拾われた時期じゃの‥」


小さく呟かれた言葉は、静かに消えていった。

ああ、そうだな。
と返事を返した俺は俯いた。

それは、理由がそれだけじゃなかった。


俺は8歳以前の記憶が全く無い。
別に気にする事ではないと思うけど


気付けば両親がいなくて
死んでいるのかどうかも分からない。

気付けばこの町にいて
本当は何処か別の町が故郷なんじゃないかって思ったり。

気付けば爺さんに出会って
此処に住まわせてくれている。


当時の記憶からして分かっていたのは
自分の名前と、両親がいないという事。
所持品は、相棒のイヤリングと‥

チャロ石の欠片だけだった。