武器を構えるその腕。
何に対しても無神経そうに見える瞳。
緩みの無い口。

‥リビアンも、こんな気持ちだった?
自分の見たこと無いような状態の大切な人が、
こんな風に、武器を自分に向けてきて‥


でも、アメスは‥

死んでないんだ。

操られているだけであって‥



「アメス、聞こえるよな? ‥分かる、よな?」



ちゃんと、いる。

ここに、いる。



「俺の事、分からねぇ、とか‥言わせねぇ」

「何言っても無駄よ? アメス、早く殺しなさい」

「俺の事、何も‥分からねぇ、と、か‥‥」


あ、れ‥?

今、何か引っ掛った‥?


“何も分からない”‥?



『セレス、むこうにもどったらね、セレスはきっと、すべてをなくしてしまう。なにもわからなくなる』

“何を失くす”?

『タイセツなモノ』


“何が分からない”?

『タイセツな、モノ』



“ソレ”は‥?



「‥ちが、う。‥俺は、‥ずっと‥‥」

ガランと武器が壁にぶつかって落ちた。
ズルズルと体が地面に落ちる。
じわり、じわりと腹が温かくなるのと
何かが出る感覚に、目眩がした。

「よくやったわね、アメス」

オバサンの満足そうな声に、揺れる視界。
その中で俺は必死に手を伸ばした。
あぁ、これが死ぬって感覚なんかな。
頭の何処かで、そんな考えが過った。

「‥ごめ、俺‥ずっと、‥っ」

やっとの思いで触れた頬は、久し振りだった。
でも、これ以上は体動かせねぇや。
もう痛くて痛くて、動けない。
体も、心も。

なぁ、届かないかもしれない。
もしかしたら、もうずっと。
それでも‥‥言わないと。



「チャロ‥」