「よぉ、爺さん」
「おお、セレスか。お早う」

ゆっくりと本から顔を上げた爺さんは
俺にとって親みたいな存在の人だ。

長くて白い髭に眉。
パッと見、神様に見えたりもすると思う。
だが俺は、クラーヂマンという職業をしているが
本物の神様を見た事が無ければ
神様がいるのかということさえ、はっきり分からない。


もしこの爺さんが本物の神様なら
どんなにいいだろうか。


頭の片隅でそんな事を思いながら
爺さんの隣に腰を下ろした。

ここの治安署の最上階の一室は、俺の部屋だ。
最上階っていっても、階数は2階に地下1階。
だか、ここは横に馬鹿広く、長さはおよそ1キロ。

施設は床に大理石が敷き詰められた談話室に
世界中の情報が何でも手に入ると言われているマシンルーム。
ナニを調べているかは知らないが、実験室に
世界中の書物が集まったとても広い図書館もある。

これらは全て1階にあって。
2階は治安署に勤める町の治安部隊や
俺たちクラーヂマンの部屋になっている。
地下は、牢屋だ。


「今日は何読んでるんだ?」

本を覗き込むと、爺さんはゆっくりとそれを捲る。
パラリと、静かな図書館に音が響いた。

「クラーヂマンの過去の報告書じゃよ」

「ふ~ん」

爺さんはいつも図書館の一番奥にいる。
爺さんの前の机の上には沢山の本が山積みになっていて
椅子は全て木製なのだが、爺さんが座っているものだけ
もふもふのクッションが全面に付けられている。

一度座った事があるけど、
なかなかの座り心地だった。

「ああ、そうじゃ」

「なんだ?」

「朝方報告してきたじゃろ?教会が何とか観とか」

「ああ」

「その後、直ぐに隊が教会に向かったんじゃがな、」

教会に、死体は一体も無かったらしい。
それどころか、教会には一滴の血もなかったらしいんじゃ。