一夜の物語

気付いたら私はいつの間にか走っていた。


ここから脱け出したい。

ただそう思って……。


何度かつまづいてしまったけど、それでも走った。

もう少し。


もう少し。


もう少しで梯子が……。


ドンッ。


「っにゃあっ。」


嗚呼……。


なにかに衝突してしまったようだ。

後ろへ僅かによろめいた。

もぅっ。


いったい何っ?


「にゃあって……。葉月は猫だったのか?」


……あ、この声。

この声知ってる。

私は上を見上げた。
真っ暗で何も見えないけど、


私には声で分かる。

……そこには間違いなく夜鬼がいる。