――ピピピピッ、ピピピピッ、


毎日同じうんざりする音が私に朝を知らせる。手を伸ばして目覚まし時計を止めて、また所定の位置へと戻る。

低血圧にとって起き上がるというのは至難の業である。

「あーっ、起きなくちゃ」

ベッドから抜け出せても、ぼーっとした頭はなかなか目覚めない。
カーテンを開けると、せっかくの休日の空はどんよりした厚い雲にお日様が隠れていた。


「いってきます」

一人暮らしを始めたので私しかいないのだけれど、もう習慣が離れないのかついつい口にしてしまう。

マンションのホールで管理人さんに挨拶するのも忘れない。いつも朝は掃除をしている管理人さんはとても気さくな人で、他の近くのマンションに住んでいる人から、自分のところにもあんな人が来てほしいと言われるくらいマメな方でもある。
私が越してきたときも、女の子の一人暮らしは不安でしょう、と自分のマンションに住んでいる頼れる人を紹介してくださった。一人暮らしに反対していた母も納得してくれたし、慣れない間は大変だけど快適な毎日。

職場は自転車で15分くらい。ショッピングモールの駐車場はお客様のための駐車場だから、従業員は自転車で来るか、駅から徒歩で出勤することになる。

「おはようございます」

従業員通路では警備員さんから他のお店の従業員さんまで、すれ違う人とひたすら挨拶する。
1日に何日か分からない人と挨拶するのって、中学や高校のときより多い。どこのお店の人か分からなくてもすれ違えば挨拶するのは、社会人としては常識範囲内だけれども。

職場に着くころにはくたくただったりする。

「東(あずま)さん、おはよう」

「廣岡さん、おはようございます」

しっかり者の廣岡さんにはいつも助けられてる、私も早く色んなことを覚えたい。ちなみに、廣岡さんには素敵な彼氏さんがいらっしゃる。1度だけ見たことがあるけど、とっても優しそうな人だった。


そして私は、最近ようやく慣れてきた制服に着替えてタイムカードを切った。