どうやらこの夫婦は、市内でもそこそこ有名なホテルへと戻る途中に綺麗な桟橋を見つけ写真を撮って歩いている間に自分達の居場所が分からなくなったらしい。

しかし、手にしていた地図を見せてもらっても、残念ながら有名所しか載っていない。
現在の位置がだいたいしか分からない上に、私自身ホテルの名前は知っているものの場所までは分からない。

成す術がなくて、一度スーパーまで引き返して助けてもらおうと考えた私は、正直に夫婦に話す。
どうやら理解してもらえたようで、3人でとぼとぼと歩いた。


暑くて人通りが少ないのも考え物である。
しかし、それもあの角を曲がって真っ直ぐ行けば一段落する。

ここを右です、と言って角を曲がる。

実はこのとき、私は少し後ろを見ていたので、角を曲がって来る人に気がつかなかった。

ドンと相手の人にぶつかってしまい、すぐに謝る。


「大丈夫ですよ」

「本当にすみません、前も見ずに」


下げた頭を上げると、そこにいたのは先日見かけたばかりの人で、私は開いた口がなかなか塞がらなかった。