「それじゃあ、流架ちゃん、行ってくるわね!」

次の日――。
母さん達がニューヨークに旅立つ日の朝。

大きなトランクを抱え、2人は手を繋ぎながらにこにこの笑顔で言ってきた。

「ああ…」

もういいから早く行ってくれ…。
気の抜けた返事をし、おれはそう願わずにはいられなかった。

「ああ…心配だわ…」

母さんが頬に手を当て困った顔をして言った。

え…!?
今さらおれたちの心配してくれンの…?
マジかよ…?

「流架ちゃん、くれぐれも火の扱いには気をつけてね!
帰って来ておうちが燃えてたらママたちいやよ?」

……

そっちの心配かよ!

ああ、そうだろうよ!!
ハナから期待してなかったさ!!

「はいはい。わかった、わかった!
充分気をつけるから!だからもう行けよ」

「流架くん、うちをよろしくね」

最後に父さんも念を押す。

「わかってるよ!
父さんたちも気をつけてな!」

「パパ、ママ、いってらっしゃぁい!!」

隣にいた未有も大きく手を振った。
ったく、これから大変だっつーのに子どもは無邪気だよなぁ~。

「じゃあね!
流架ちゃん、未有ちゃん!いってきまぁす!」

重そうにトランクを押しながら母さんたちは手を振り去って行った。
おれたちも2人の姿が見えなくなるまで見送り続けた。

2人が無事に帰ってくることを祈って……。

「さ、おれたちも行くか!」

「うん!」

2人が見えなくなったのを確認すると、一旦家に戻り準備を整えてから家を出た。