「うーっす!」
「はよー」
「なぁなぁ、昨日よー―」

学校に近づくと、おれと同じ制服を着た男連中の姿が続々と目に入った。

おれの通う高校は、家から徒歩15分くらいにある男子高で、見渡す限り男・男な所である。

唯一の女はオバさん先生くらいで、ひじょーにむさ苦しい。

「おっす、流架!」

校門をくぐると、突然後ろから声をかけられた。

「おう、光輝!はよー」

そいつはおれの親友というか、悪友というか、そんな関係の浜谷光輝であった。

光輝はむかつくことに身長が175㎝もあって、168㎝のおれが並ぶと見上げる状態。
しかも、光輝のやつ男前で、凛々しい眉毛にくっきり二重の大きな目。
身体も浅黒く、鍛えてるのか程よく筋肉がついている。

いいなぁ……。
おれもこんな男らしくなりたい。

「どーした?なんか元気ねぇじゃん」

す、するどい……!

さすが親友!
光輝はすぐにおれの表情から心情を察し心配して聞いてきてくれた。

「ああ、朝からすげー話し聞かされてさ」

「え?
なになに、詳しく聞かせろよ」

がしっと肩を組んできた光輝と一緒に教室まで向かう。
その間におれは今朝のことを光輝に話した。

「うわ、すげー唐突かつ大胆だなぁ、おまえの両親」

「だろ?ふつー仕事とはいえ、高校生の男と保育園児の娘を置いて海外行くかぁ?」

光輝だって驚きより同情の目で見てるし。

「流架、困ったことあったらなんでも話せよ?協力するからさ」

「ん、ありがと。でも実際家事は得意だし、未有の保育園は丁度家と学校の中間だからどーにかなるだろ」

こうなっちゃったものは仕方ないし、甘えてばかりいられないもんな。

「ホントに大丈夫かよ?」

「ああ、へーきへーき! 心配性だなぁ、光輝は!」

まだ不安そうに聞いてくる光輝におれは明るく言ってやった。
ほんと、優しいなぁ~光輝。

「それより、1時間目なんだっけ?」

光輝がそれ以上心配しすぎないように、おれはわざと話題を変えた。

「あ? えっと、国語じゃね?」

「げ。国語っていつも眠くなンだよな~」

「俺もー」

それ以上はその話題を口にすることなく、おれたちは笑いながら教室に向かった。