いつものように4人で食卓を囲んでいる時のこと。

突然母さんが満面の笑みでおれに話しかけてきた。

「流架ちゃん、もう高校には慣れた?」

……そう思うんなら高校生の男をちゃん付けで呼ばないでくれ。
つーか、高2の6月で慣れてないってどうなの?

「あー。 まあね」

パンを口に運びながらテキトーに答える。

「そう、ならよかったわ!
ね、香流パパ!!」

「そうだね、有沙ママ」

2人は顔を合わせてにっこり笑い合った。

てか、その子どもの前で名前で呼び合うのもどうかと思うけど。

突然だけどうちの親は若い!!
父さんが43歳、母さんが39歳なんだけど…。

とにかく、中身と外身がマジで若い!!

元々、2人共童顔なんだけど、それを上回るのが若々しい心の持ちよう。

それを象徴するかのような彼女らの思い込み。

どんなものかというと、母さんは自分は“姫”であり、父さんは“王子”であると信じて止まない。

なぜか父さんもそう思っているらしい。

その為なのか、母さんの髪型はツインテールに巻き髪という乙女チックなもの。

父さんも、見た目で言ったら二十歳に見えるんじゃないかって位。
ったく、程ほどにしろよ、って感じだよな。

「これなら安心して流架ちゃんに任せられるわね」

母さんは持っていたパンを置いて、胸の前で手を組んで言った。

なんだって? 今、なんつった!?

「なに?なんの話?」

任せるってなにを!?

おれはこの時、かなり嫌な予感がした。

「流架ちゃん、明日から未有ちゃんの送り迎えとお世話、よろしくね!」

母さんに満面の笑顔で言われ、おれは訳も分からずその場で固まってしまった。

は?
今、なんつった?

明日から、未有の送り迎え?

「はぁあぁ!?
ちょ、なんだよそれ!!」

あまりのことに、おれは食事中にも関わらずテーブルを思いきり叩き、椅子から立ち上がった。

「おにーちゃん、コーヒーこぼれちゃったよー?」

未有が心配そうにおれを見上げたけど、正直今のおれはそれどころではない。

「どういうって……そのままの意味よ?」

だぁあ!! そうじゃねぇだろ!?
小首を傾げてもかわいくねぇっつーの!!