「あ、ありがと」

助けてくれたわけだし、ちゃんとお礼を言わないと失礼だよな。

「おや、ずいぶん素直ですね」

「おれはいつだって素直だ!」

誰のせいでこんなに怒ってると思ってんだ、アホ!

「そうですか。
あ、家に着いたようですね」

「へ?」

あ、ほんとだ、いつの間に。

「それでは、僕は失礼しますね」

「うんっせんせー、またねーっ!」

「流架くん……」

突然あいつがまじめな顔をしておれの名前を呼んだ。

な、なんだ…?
はっ!まさかまたおれのことを襲う気じゃあ……!?

「な、なんだよ……!?」

おれは万が一の時のために身構える。

今日はまだ未有だっているんだ。
やたらなことは出来ねぇはず……!

身構えているうちにヤツはどんどん近づいてきて…

キ…
キスされる……!?

「あんま無理すんじゃねーぞ。
何かあったらおれを頼れ」

「え…?」

未有には聞こえないくらいの小さな声。

な、なんで…?
敬語じゃないってことは、今の素…?

なんでそんなこと…

「それじゃあ、また明日」

「ばいばーい!!」

そして綾瀬はそのまま去っていった。

なんだよ。
ホンット訳わかんねぇ!

なにが俺を頼れだよ…!
おれのファーストキスを奪った二重人格のくせに…!

そんなこと信じられっかよ!

ホント変なヤツ!

…でも、ちょっと――
ほんとにちょびっとだけど!
嬉しかったかも…。

い、いや!
でもそれは、あいつのしたことを許したわけじゃなくて…っ