「流架くん?
どうしました?先程からずっと黙っていますが」

そんなおれに気付いたあいつが、話の矛先をおれに向けた。
しかも、おれにはもう正体がバレているのに、敬語を使ってるあたり、ヤツの完璧さがにじみ出ている。

つーか、別に話しかけなくていいっつーの!!
大体からして誰のせいで話さないと思ってんだっ

「別に……
おれが話さない理由、自分の胸に聞いてみたらどうですか?」

わざとらしく敬語を使ってみる。

「……やはり、あの時のことが原因ですか?」

当たり前だっ!
他に怒る理由があんのか!?

「……おれの前に現れるなっつったろ?」

「僕も言いましたよ?
それは無理な話だって」

「じゃあなんで……っ」

「危ない!」

なんで一緒に帰ることになってんだっ!

そう言おうと思った瞬間、おれはヤツに思いきり体を引っ張られた。

「え…!!?」

なにが起きたか分からずにいると、おれの後ろを一台の車が猛スピードで走り去っていった。

う、おお――!!??
あ、あぶねぇっ!

なんだってあんな猛スピードで走ってんだよ!?
この辺は住宅街だから車道と歩道が分かれてねぇのに……!

「まったく、こんなところであんなにスピードを出すなんて……。流架くん、大丈夫ですか?」

車の去っていった方を見つめながらあいつは呟いた。

おれはというと、未有を挟んであいつに抱きしめられるような形に……。

「わ、わっ!放せよ!」

その状況にびっくりしておれはやつから飛びのいた。

「助けたつもりだったのですが……、嫌われたものですね。
でも、怪我はないですか?」

「おにいちゃん、だいじょうぶ?」

未有も心配そうに下から覗き込んでくる。

つーか、助けるって…?

そっか、あのままだったらおれ、車にぶつかって――。
おれのこと助けてくれたんだ……。

しかも、さっきまでおれが車道側を歩いていたのに、いつの間にか未有を挟んで反対になってるし……

なんなんだよ、やさしかったり、豹変したり……調子狂うじゃんか。