春の暖かな陽射しから一転し、徐々に暑く感じ始める6月――。

おれ、五十嵐流架(いがらしるか)・高2は、その日の朝食時、とんでもない話を耳にした。

大袈裟かもしれないけどそれは今後のおれの人生を大きく左右させるんじゃないかってくらい…

衝撃的な出来事だった――。


“ジリリリリリ――ッッ”

けたたましい目覚ましの音でおれは目を覚ました。

「ふあぁあぁっっ」

ベッドから起き上がり、大きなあくびをする。

朝の陽射しがまぶしいけど、おれの目覚めはいい方だと思う。

まだ眠い目を擦りながら、身支度を整える。

制服はYシャツのボタンを2つ程外し、赤と白のストライプのネクタイを少し緩めに巻くというやや着崩したスタイル。

ジャケットは朝食の邪魔になるから後で着るとして。

髪型は少しワックスを付けて整える位。

ホントは、ツンツンに立たせてカッコよくキメてみたいんだけど……

おれの髪って細くてストレートだからなかなかうまくいかない。

よくダチとかに
“サラサラでうらやましい”とか言われるけど……

本人からすれば女みたいでいやだっつーの!

ただでさえこの女顔にコンプレックス持ってるっつーのに!!

一通り身支度を済ませ鏡でチェックしたあと、おれは鞄を持って1階のリビングに足を運んだ。

「はよー」

リビングに顔を出すとすでにそこには、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいる父さんと
その隣の椅子にはにこにこと笑っている妹の未有(みゆ)、そしてキッチンにはフリフリエプロンを着けた母さんがいた。

「あら、流架ちゃんおはよう!
さ、流架ちゃんも座って」

目玉焼きを手に母さんは父さんの前の椅子に座った。

4人揃ったところで朝食を食べる。
それが五十嵐家の小さな日課である。