「あ、うちそこなんで」

話をしているうちにいつの間にかおれたちは家の前まで来ていた。

「そうですか……」

え!?なに?
今、一瞬冷たい空気流れなかった?

そう思って凛先生を見てみたが、彼の表情はいつもと変わらなかった。

気のせいか……?

おれは特に気に留めることなく、ドアの鍵を開けた。

真っ先に入っていったのは、未有。
そういや見たいテレビがあるっつってたな。

当然、玄関先に残ったのは、おれと凛先生。

送ってくれたし、ちゃんとお礼言わないと失礼だよな。

「あの、凛先生。
送っていただきありがとうございました」

そう言って振り返ると――……。

「!?
ん……っ、ンん……!?」

突然自分の口唇が、生温かいなにかでふさがれた。

え――……?

え?
え!?
こ、これって……!?

キ、キス!!?
お、おれ、キスされてる!!?

なんで!?

「ん……っんむぅ~っ」

相手の胸板を叩きながら必死に抵抗を試みる。

しかしビクともすることなく、それどころか行為はエスカレートし、ヤツは舌まで入れてきやがった。

そして、ようやく口唇が離れた時は、すでに酸欠寸前だった。

「はぁっ、はぁ……っ」

な、なんなんだ!?
おちつけ、落ち着けおれっ!!

今目の前にいるのは、あのやさしい凛先生だ。

でも、今キスしてきたのも、凛先生。

なんで!?
意味わかんないんですけど!!

「な、なにやってンすか!?先生!!」

「何って、キスに決まってンだろ。
踊ってるように見えたか?
バカだなお前」

見えるわけねぇだろ!
バカはどっちだよ!!

「そうじゃなくて!
お……おれ、ファーストキスだったンすよ!?」

そう。
おれは、彼女がいたこともなければもちろんキスもしたことがなかった。

それを男の……しかも、妹の担任の先生に奪われてしまうとは……!

密かに大事にしてたのに……ファーストキス。

「ん? お前、キス初めてだったのか。
それはよかったな、相手が俺で」

よくねぇぇ!!
どこがいいんだ、ボケーっ!!