ある日の迎え時――……

「ありがとうございましたー」

いつものように未有を連れ保育園から出ようとした時のこと――。

「おや流架くん、おかえりなさい」

「あ、りんせんせいだぁ!」

「ど、どうも」

門には私服姿の凛先生がいた。

「珍しいですね。帰りが一緒になるのは」

「……」

「?
どうかしたんですか?」

「え?
あ、なんか雰囲気が違うと思って」

いつもはエプロン姿だもんな。

それにしても私服姿もかっこいいなぁ。

「ははっ、いつもは動きやすい格好ですからね。
どうです?このまま一緒に帰りませんか?送りますよ」

えぇ!?
り、凛先生が……!?

うわ、どうしよっ
なんか変なキンチョー感が……!

「わぁい!りんせんせいといっしょ、やったぁ!」

すでに未有は大はしゃぎしてるし。

「よろしいですか?流架くん」

いいもなにも、微妙に嬉しかったりして……。

「はい、もちろん」

「よかった。
では行きましょうか」

うわわ。
そんな顔で微笑まれるとマジで緊張するっ。

こうしておれたち3人は再び歩を進めた。

「流架くんの家は確か園から近いんですよね?」

「そうですね。
大体10分くらいでしょうか」

「実は、僕の家もこの近くなんですよ」

「へぇ、そうなんですか」

先生との他愛のない話。
プライベートのこと話すなんて滅多にないからなんか新鮮だな。

「もうご両親のいない生活にはなれましたか?」

「あ、はい。
大分……」

生活には慣れたけど、問題があるとすれば……。

「ご両親はいつごろ戻ってこられるんですか?」

「……わかんないんです」

そう。それだ。
おれも未有もあの親たちが、いつ日本に戻ってくるのか全く知らないということだ。

たまの手紙も帰国についてはノータッチ。
ホンッとにあの親は……帰る日くらい伝えろっつーの!

「そうですか。
前にも言いましたが、何かあったらなんでも言ってくださいね」

「ありがとうございます」

やっぱ凛先生は優しいな!

ったく、光輝が変なこと言うから
変な想像しちゃったよ。
心配して損した!