あー……、びっっくりした。
なんだったんだ、一体……。

あれは本当に凛先生だったのか?

その時おれは光輝の言ったことを思い出した。

“ウラがある”
“頭がキレそう”

いや、でも、もしかしたらおれに見間違いで、先生にそっくりな親戚とか?

そうだよ、そうに決まってる!

でも、本当にそうなのか?
おれが先生を見間違える訳は……。

って!?この言い方おかしくない!!?
これじゃ、おれが一番凛先生を知ってるみたいな…。

べ、別に深い意味は……!
あ゛ーっ、訳分かんねぇっ。

「帰ろ…」

変なもやもやを抱えたまま、おれは立ち上がり帰路に着いた。

家に着いたときはすでに6:30を大幅に回っており、未有がご立腹だったのは言うまでもない。

次の日。
昨日の出来事を確かめる為、いつもより気合を入れて保育園に向かった。

「おはようございます!」

意気込みながら凛先生を探す。

「おはようございます、未有ちゃん」

辺りを見まわしていると、保育室から凛先生が笑顔で出てきた。

「おはようございます。
あれ?流架くん、なにをそんなに怒っているんですか?」

「へ?
あ、いや別にっ、なんでもないです」

「?おかしな流架くんですね。
未有ちゃんは元気ですか?」

「あ、はい」

「それではお預かりしますね」

にっこり笑う凛先生の姿はいつもと変わらない。
やっぱり見間違い…?

「……ん……流架くん!?」

「え!?あ、はい!?」

あれ、おれボーっとしてた!?

「大丈夫ですか?
熱ですか……?」

そう言って凛先生はおれの額に手を当てた。

ドキン――ッ

なにときめいてンだおれ――!!?

「おにいちゃんだいじょうぶ?」

「へ、平気!
じゃ、じゃあな未有!いってきます」

おれは逃げる必要はないけど、逃げるようにその場を去った。

あーびびったぁ。
でもやっぱり先生はいい人だと思う。

きっとおれの見間違いで、先生のそっくりさんとか、親戚だったんだよ!
うん。

それから次の日も、次の日も……。
凛先生は、いつもと変わらず笑顔で誰にもやさしい凛先生のままだった。