すっかり存在を忘れてしまっていた未有に制服のすそを引っ張られて我に返り、慌てて凛から離れた。


「い、いやっ、なんでもねぇよ!
さ、帰るぞ!」


不自然なくらい明るく言って、おれは再び歩き始めた。


「……手と足の動きが同じですよ」

「!?」


突然敬語に戻った凛に突っ込まれ、動揺を悟られたかのような気がして、おれはキッと凛をにらみつけた。


くっそー!

不覚にもこいつといい雰囲気になってしまった……!


そして、家に着き未有が先に中に入った瞬間……。


「!!」


不意打ちを狙った凛に、まんまと唇を奪われてしまった。


「な……!?」

「さっきお預けをくらったからな。じゃあな」


それだけ言うと、凛は軽く手を振りながら去っていった。



くっそー。


結局キスされてるしっ。