「凛先生なら、たしか園長室よ。
あ、そうそう!そういえば、お迎えに来る前に園長先生が流架くんに園長室に来て欲しいって言ってたわ」

「え?おれ、ですか……?」

おれの疑問を解消するように、クラスにいた先生が、にこやかに笑いながらそう教えてくれた。

つーか、園長室に呼ばれるなんて、おれなんかしたのか?

なんか、嫌な予感がするんだけど……。

幸い未有はまだおれの存在には気付かず、友達と遊んでいたから、そのままおれは言われたとおり園長室に向かうことにした。

園長室は未有の保育室から少し離れた向かい側にあり、おれが見ている限りでは誰でも気軽に出入りできるようになってるっぽい。

っぽい、っていうのは、おれ自身実際園長室を利用したことがないから、他の保護者の人たちを見て思ったからなんだけど。

――コンコン

閉じられた扉を、軽く2回ほどノックすると、中から中年のおばさんの優しそうな声が聞こえてきた。

「どうぞ」

「あの、失礼します……」


初めて入る園長室にドキドキしながら扉を開けると、中にいた人物が一斉に俺のほうを見た。

そこには、めがねをかけてやわらかく微笑んでいる園長先生と、その隣には黒いスーツを身に纏い、しかめっ面をした如何にも頭の固そう40代半ばくらいのおじさん。


そして、そのテーブルを挟んだ正面には凛が座っていた。