光輝は無言で歩き、どんどん人気のないほうに進んでいく。


途中何度か声をかけてみたけれど、反応はなくてようやく立ち止まったのは朝のこの時間には誰も来ないだろう、人気の少ない裏庭だった。


……

なんでこんなところに?


は!?

まさか、凛に邪魔されたからって昨日の続きをするつもりか……!?


じょ、冗談じゃねぇ!

昨日のことでおれの中に備わった警戒心が呼び起こされ、この場から立ち去った方が懸命だ、と訴えている気がする。

そして、いつ襲ってこられてもいいようにファイティングポーズをとっていると、それまで背中を向けていた光輝が振り返った。


「流架……」

「や、やめろ……」


ゆっくりとおれに近づいてくる光輝から、おれは一歩、二歩と後ずさる。
そして……

「流架、悪かった!!」

「へ?」


突然光輝に頭を深く下げられて、面食らってしまう。

構えていた腕になんとなく虚しさを感じて、そっと下ろす。

それと同時に光輝も、頭を上げて先を話し出した。


「昨日は突然あんなことして悪かった。びっくりしたよな?
俺、ずっと見守り続けてきたお前が、他のやつと付き合ってるって聞いてすげぇ悔しくて……。
自分でも分からないうちに、ってのは変だけど……。流架の気持ちも考えねぇであんなことして本当にごめん!……許してほしい」

「光輝……」