「流架くんでしたね?学校は大丈夫ですか?」

一通り説明を終えた先生が時計を見ながら言ってきた。

「え?あっ!やべっ」

忘れてた!おれ、これから学校じゃん!

「じゃあな、未有!行ってくるなっ」

「あ、おにいちゃん、いってらっしゃ~い!」

すでにクラスの友達(はやとくんってどの子?)と遊んでいた未有に声をかけ、慌てて玄関に向かった。

「いってらっしゃい。気をつけて」

先生も、保育室から顔を出して手を振りながら笑顔で見送ってくれた。

「えーっと、5時前には迎えに来れると思うんで!よろしくお願いします!」

そう言っておれは急いで靴を履き、学校に向かって走った。


ようやく学校に着き、校舎に入った途端予鈴が鳴り響く。

「やべっ!HR始まる!!」

上履きを履いて、3Fにある教室まで猛ダッシュ。こういうとき、3Fに教室があるのはつらい。
どうにか本鈴前には教室に着いたけど……。

「はぁ、はぁ……っ」

……激しい動悸、息切れに襲われていた。
あ、朝から全力疾走はきつい……!

「おーっす、流架!遅かったじゃねぇか」

弾む息を整えながら、窓際にある自分の席に向かっていると、おれの前の席の光輝が、話し掛けてきた。

「おう。
今日から未有の送り迎えだからな」

「あぁ、そっか。ごくろーさま」

「で、どーだったよ?」

鞄から教材を出していると、隣の席の有村大介が突然そんなことを言ってきた。
実はこいつにも両親のことを話していた。

「は?
どうってなにが?」

全く意味わかんねぇんですけど。

「なにがって決まってンだろ!
保育士だよ、保育士!!」

「ああ。なんだ」

「なんだって、お前なんでそんなにあっさりしてんだよ!」

大介は興奮したように身を乗り出しているけど、おれには言ってる意味が全然わからない。

「だから、なにが?」

すると大介は、机を叩きながら怒鳴りつけてきた。

「バカかお前!?
保育士と言ったら女だよ女!!かわいい子いたかよ!?」

ああ、なんだ。でもそんなに怒んなくてもいいのに。
つーか、バカってなんだよ、バカって!