おれが心の中で葛藤を繰り返していると、




「流架」


「凜……」




光輝に負けないくらいの鋭い目でおれを睨みながら、
凜は呆然としていたおれの方へと歩み寄って来た。




怒られる――……っ。




そう思って目を閉じた瞬間、ふわりとおれの体は、凜の胸の中へと吸い込まれた。





「凜……?」



「……怖かっただろ? 遅くなって悪かった」




そして、おれも凜にしがみつき、凜の胸に顔を埋めた。




「……平気。 凜が来てくれたから……。
つーか、お前ってホント嫌味なくらい王子みたいだよな」




「ははっ、なんだそれ」




そう言っておれの頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。



それが心地よくて、しばらく抱き合ったままでいると、ふと一つの疑問が頭を過ぎった。




「ね、凜? なんで戻ってきたの?」




顔を上げて、凜に視線を合わすと、凜はおれを体から剥がし、寝室へ繋がる扉を指さした。



「え?」



指の先を辿ると、そこには今にも泣き出しそうな顔でおれたちを見つめる未有の姿があった。