第9話
「ご苦労様です」「ああ、ご苦労はん」「仏は?」「こっちです」「…」「なんなんですかね?」
「おやっさん、なんなんですかねえ。これ」「んっ、どれどれ…」死体に、見入る。指を差し。
「これはなあ、ある組織の見せしめの拷問だ」「拷問?」「ああ、指の生爪剥いで、そこへ蝋燭
を、立てるんだ。そして、今度はなあ、指 自体が、蝋燭のように燃えて行くんだ。痛てえ〜ぞう
これを、やられると言うことは、そうとうなやつだったんだ!発狂して、死んで行くんだ」
   「恐いっすね!」「ああ、おまえもやってもらえ!」「いや、いいっす!」
「あと、所持品は…拳銃と、ラーターですね」「拳銃は、どうせ登録ナンバーは、消してるさ」
   所持品を見向きもせず立ち去ろうとする風間に、「ラーターは?どうします?」「おまえが、入るなら貰っとくか?」「でもね、仏さんのは…ちょっと…、でも、図柄が、いいですよ!これは…」「んっ、どれどれ…」所持品袋を、持ち上げると、鯉の図柄のライター見て「これは…、悟?まさか?」もう一度死体に…掛けてあった毛布を取り除き。「悟!悟なのか?何で、何で、こんな所に
   居るんだよう!お、起きろよ!寝てる場合か?起きろ!起きろよ!」身体を揺らす。「おまえーっ、
カッコ悪いぞう。こんなかっこうで!な〜、起きろよ!おまえらっ!何を、追ってた。何を、掴んだんだ」「少々の事では、死なないおまえが…何故?何が、あった!悟。杏子はんは?」一時間後。
   「流か?」「はい、あっ、おやっさん!どうしました?久しぶりですね!」「ちょっと、来い」「今、行けません」「いいから、来い」「何が、あったんすか?」「悟、悟を、迎えに来てやれ」 病院の霊安室。「流」「はい」「何を、掴んでた」「いえ、何も」「何も?」「嘘、つくな!」「…」「じゃあ、何故、こうなるんだ!説明しろ!」「何も、何も、ありません」「ちぇっ!」

胸倉を掴み、一発殴った。「いいか?人が、一人死んだんだ!何も無い訳が、ないだろう」肩を振るわせた。
三日後。
   
新神戸駅。「おやっさん」「何も、言うな!」「お願いします」一礼した。「ああ…」
   風間刑事は、胸に悟のお骨抱いて、島根県隠岐の島に…。そこは、先輩の故郷だった。
我々は、杏子さんと、”チャン”を、追って歩き出した。