「怪我、治ったん?」
「うん!もう大丈夫!あと、あのときは・・・ありがとう」
考えるとあたしはここに来てたくさん自分が変わった気がした。
泣くなんてもう何年ぶりだったんだろう。
笑うことすら、全然なかったのに自然に笑ってる自分に気付いた。
ありがとう、も
ごめんなさい、も
素直に言えるようになるなんて思ってなかったんだ。
それはきっと、おばあちゃんと彼のおかげだと思う。
坂をぐんぐん二人の足は登ってゆき、少し山道に入って草むらを歩いた。
さっきから足のつま先がジンジンと痛む。こんなところにブーツなんか履いてくるんじゃなかった。
あ…でも、あたしコレしか持ってないや。
「着いたで。」
歩きながらブーツと睨めっこしていた目線を上げて、辺りを見回した。
正面には、馬鹿が着くほど大きなモミの木。深々と茂るその木は冬の風に誘われて葉を揺らす。
「あれに登る。」
「・・・は?今なんと言いました?」
リキはその木を指差して平然と言った。
…というか、モミの木って登れないでしょ。クリスマスツリーだもん。登れる枝なんてないよ。
「見てみ。あそこに一本太くて、ハゲとる枝があるやろ?」
「あ、ほんとだ」
リキが指差したのは、男の子だったら余裕で登れるだろうの位置で、女の子のあたしには無理な所にある。

