「ねぇ、おばあちゃん。何であの人はここを出てったの?」



あの人というのは母の事。

あたしのその質問にばあちゃんは顔を少し困らせて、悲しそうな表情を浮かべて言った。



「…やっぱゆうてへんかったんやね。」



言ってない、って…何を?



「あの子は昔からここが嫌いやったんよ。」
「・・・なんで?」
「この村は仲間意識が強よーて隣の家の事情も筒抜けで・・・」
「それは分かる気がする」



ここに来て2日目であたしは身を持って経験した。

噂話が飛び交う街、プライバシーも何もないこの村。

他人のことに興味のない東京の街とは違いあたしも最初戸惑っていたから。