「着いたで。」
「……ここ?」


駅からだいぶ歩くこと約30分。明かりの灯った大きくて古い2階建ての家の前でリキは止まって言った。『古谷』と書かれた表札が取り付けてあり門を抜け、よく手入れされた
庭の芝生を恐る恐る歩く。


「ちょっと待ってって!」

庭に気を取られていたせいか、リキに視線を向ける玄関の扉を開いて、既に家に上がっていた。あたしはどうしたらいいのか分からなくて、ただ玄関に立ち止まる。



「何べん言わせんねん。はよ来い」



リキは初めてあたしに手を差し伸べた。

その手で荷物を持ってくれたからあたしは急いでブーツを脱ぎ始める。
ほんとにブーツって不便…あ、靴忘れたな。