「今後一切、千秋先輩に近寄らないでよ!もし近寄ったら、美結、何するかわかんないから!」
怖い……。
膝がカタカタ震える。
あたしは声を詰まらせてしまう。
「可哀想な女。アンタ、千秋先輩に遊ばれてるってことに気づいてないんだから」
身体をくるりと後ろに回して顔だけをこっちに向ける美結ちゃん。
「ご愁傷さまぁ」
勝ち誇ったようにクスッと笑って、ハチミツ色の髪を揺らしながら美結ちゃんは去って行った。
あたしはしばらく動けずにいた。
小悪魔ドール、百戦錬磨。
狙った男で落ちない人はいない。
美結ちゃんが恋敵になったら、あたしは勝てる自信なんかないよ。
それでも……
あたしは凡人だけど。
勝てるとこなんてないけど。
自分でもどうしようもないくらいに、あたしは千秋に焦がれてる。
もう疾走するこの想いを止めることなんて出来ない……。


