「それは、オレもわかんないや。まっ、ただの噂だと思うけどね!だって美結ちゃん、超〜可愛いんだよ!」
パッと笑顔を浮かべるコウちゃんは、どうやら桜井美結という女の子にご執心のようだ。
……噂がほんとなら怖いよ。
あたしは、ふと羽鳥に目をやる。
胡座をかいて、髪の毛をくしゃりと握りこんだまま、羽鳥は何か考えこんでいる様子だった。
さっきとは一変して、眉をしかめて険しい表情を浮かべている。
「羽鳥どうしたの?」
声をかけると羽鳥は顔をあげた。
「別に、なんでもねぇよ……」
羽鳥はボソッと呟く。
だからあたしは、それ以上なにも聞かなかった。
「ああっ!美結ちゃんだ!」
「どこよ?性悪女は」
はーちゃんに、あそこだよ!と、校舎の中を指さしながらコウちゃんがはしゃぎだす。
「ねぇ!ちょっと見に行こうよ」


