「それだけであたし強くなれたんだって知ってほしくて、わかってほしくて。千秋に伝えたくて……」
今のあたしならきっと言える。
『だから今の椎菜は逃げるなんて卑怯なことしねぇし、自信持って正直に言うって信じてたけど?』
逃げるという手段は卑怯なこと。
あたしはそうじゃないと信じてくれていた千秋。
終わりを告げた雨の日に、残してくれた千秋の想い。
「それから?」
あたしの続きを急かすように千秋は言った。
「言ってごらん?」
顔を傾けてあたしに問いかける。
今なら誰が居ようと大声で千秋が好きだと言えるくらい、小さなあたしの決意は堅かった。
千秋がくれたキャンディのビンを目一杯、握る。


