羽鳥はそこで口を閉じてマイクを持つ手を力なくおろし、涼くんにマイクを返す。
そして遠くからこっちに顔を向けた羽鳥が、心なしか笑いかけてくれた気がした。
羽鳥の優しさはどんな時でもあたしを救ってくれる。
折れそうになった心だってすぐに立ち直ることが出来る……。
けれど今あたしは助けてほしいわけじゃないの。
悲劇のヒロインぶってると思われるのは絶対に嫌だ。
なによりまた千秋に助けてもらわなきゃ告白出来ないなんて、なにも変わってないんじゃないかって思うから。
そう思ったのにあたしを揺さぶるのはやっぱり千秋だった……。
「コイツはもうぜってぇ逃げねぇから、黙って見てろよ?」
響き渡る声とお得意の余裕の笑みにあたしの胸の中にじんわりと暖かいモノが広がる。


