最初に言葉を発するまで時間がかかったと思う。
ちゃんとしたことを言おうとか、綺麗に聞こえるようにしようと思えば出来た。
けどそれは本心とは違うから。
「千秋は王子様だから、あたしじゃ釣り合わないから……」
ありのままを伝えることにした。
それがきっと今のあたしだと思ったから……。
どこまでも臆病で踏み出せないままでいた。
だけどそれは昨日までのあたし。
「ずっと怖かった。笑い者になることも、女の子達に馬鹿にされることも睨まれることも……。全部、怖かったの……」
言いたいことがどんどん出てくるのに、一つ一つ上手く口に出来なくて頭が回らない。
「んなこと前から知ってる」
降ってくる声はまだ少し遠くに感じて、同時に千秋との距離もまだ近くないって思った。
千秋は表情を変えない。


