「えっ、えっと」
「とりあえずコレ、つけてね?」
「ちょ、なにコレ……?」
「時間がない。早くつけて」
早くって……。
涼くんがあたしに渡してきたのは胸元につけるようなピンマイク。
コレをつけろっていったいどういうことなの?
「告白するんだろう?王子にさ?まったく、その時は僕に教えてって言ったのに」
あ……。
ふてくされた顔でそう言われて、渡り廊下での話のことを思い出した。
そういえばそうだった。
無我夢中で走ってきたから涼くんとの会話のことをすっかり忘れていた。
なんの躊躇いもなくあたしの胸元にピンマイクをつける涼くん。
「先輩は花子さんだったけどさ、今は違うだろう?」
ヒソヒソとした声であたしに問いかける。
あたしの過去を知っている涼くんだけど、散々な目に合わされたりもしたけど“今は違う”から。
あたしも、涼くんも今は違う。


